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「グリーン・ニューディール政策」と日本(平成21年5月コラム)

連載:Mr.Ishikawaの時事コラム

エネルギー調達構造が劇的に変わり始めた
 オバマ米大統領の「グリーン・ニューディール政策」の登場で世界のエネルギー調達構造が劇的に変わり始めた。石油や石炭など化石燃料から脱皮して自然エネルギーなど再生可能エネルギーに転換する動きは、実は先進諸国の欧州だけでなく中国や途上国でさえとっくの以前から行っていた。だが、遅ればせながら世界No1経済大国の米国の方向転換で世界の潮目が変わり始めたのだ。「ニューディール政策」は1929年の世界恐慌時にフランクリン・ルーズベルト米大統領がテームズ川流域に49個のダムを建設し電源開発するなど恐慌脱出を図った政策を言う。オバマ大統領はそれに「グリーン」の冠をつけ、太陽光・風力・バイオマスなどの再生可能エネルギーを盛んにし、地球温暖化防止と新しい産業による経済再生と雇用創出とを同時に実現しようというもの。比べて、日本は化石燃料なしで地熱や水力や波力やバイオマスなど自然エネルギー源が豊富であるにもかかわらず、政府の補正予算は急場しのぎ対策でしかなく、長期的展望に基づく骨太の政策になっていない。従って、エネルギー構造転換にも環境対策にも経済危機対策にもならない。それでいて政治家や官僚は「環境先進国・日本」と胸を張る無定見ぶりであり、世界中から“ガラパゴス化する日本”と揶揄されているのをご存じなのかどうか。

エネルギーなしで社会は動かない
 以前にも述べたが、エネルギーはクルマや航空機などの動力源になるだけでなく、家庭生活や産業や都市・農村などあらゆる分野を根底で支える最も重要なものである。人が食物を摂取し生きるように、エネルギーなしで社会は動かないし経済危機が改善されることはない。まして、地球温暖化で人類は生存の危機にある。地球を直径30㎝のボールに例えれば、大気層は0.5㎜の厚さしかない。化石燃料を燃やし二酸化炭素を排出することにブレーキをかけないと地上の生物は死滅する。18世紀の産業革命はワットの蒸気機関車で石炭をエネルギー源にした。第二次産業革命は石油がもたらし、自動車など原動機が担った。このように安い化石燃料によって現代文明が支えられてきた。ところが、産油国のUAEのドバイは石油依存の体質から脱皮しようと石油で儲けた資金でベルサイユ宮殿より豪華は7つ星ホテルを建てるなどリゾート産業化など多角化路線へ転換している。

第三次産業革命へ
国内から石油が出る米国もブッシュ大統領時代にトウモロコシからエタノールを作り自動車燃料に加えることを始め、日本などトウモロコシ輸入国から悲鳴が上がった。日本は耕作放棄農地が膨大に増えトウモロコシを栽培できる土地が多くあるのにやらずに文句を言うのでは筋違いである。自動車利用大国の米国はトウモロコシ由来のエタノールが85%入ったガソリンでクルマを動かしており、オバマ政権はそれをさらに推進する姿勢だ。一方、日本はわずか3%混ぜることしか認めていない上、燃料はガソリンにエタノールを混ぜると違った製品とみなし2重に税金がかかる。経済的にペイしないので普及しないのである。「グリーン・ニューディール政策」は途切れていたエネルギーと経済と環境の3領域をつなぐシステムであり、第三次産業革命へ至る道である。

政治家が言う「環境先進国・日本」とは公害解消技術の領域に限る
エネルギーと経済と環境とをリンクさせる点では発展途上国以下の水準でしかない。日本の太陽光発電は05年まで世界のトップ普及率の設備容量だったが、そうなったのは国も地方自治体も設置に補助金をつけ経済的にメリットが出る社会システムにしたからだ。それが今はドイツ、米国、スペインに追い抜かれ4位に後退してしまった。風力発電も、中国、米国がすさまじい勢いで伸びており、米国は30年までに電力の20%を賄う計画だし、デンマークは風力を中心にエネルギー自給率100%になった。これは、海外では電気の固定価格買取制度(FIT)や発電と送電線網を切り離し発電事業者が自由に送電できるシステムになっているからであり、日本ではこれらのシステムがない。日本の一次エネルギー自給率は4%であり、その50%を石油に依存している。木質や家畜排せつ物や生ゴミなどから電気やガスや燃料をつくるバイオマス・エネルギーは日本では02年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を策定したが、遅々として進まない。これら再生可能エネルギー利用発電量の総発電量に占める比率は07年現在で日本は0.7%しかなく、発展途上国以下の状態である。75カ国が参加署名した「国際再生可能エネルギー機関」に日本は署名していない。まさに、日本は進化する世界から取り残され“ガラパゴス化”しており、社会システム改革をしない政治家や官僚の不作為の罪は重い。

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