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緑水の森自然活動

心のケア、カウンセリングを中心に活動している『緑水の森』。震災以降の相談ですでに2万件を超えているそうです。2014年は『やまがた絆の架け橋ネットワーク』の活動でやまがた公益大賞も受賞。「未来を識る力」と「未来を創る力」をテーマしている、大友哲範さんにうかがいました。
やまがた避難者支援団体 活動インタビュー Archive number 008
緑水の森支援活動
りょくすいのもり しぜんかつどう


緑水の森支援活動
緑水の森支援活動 代表 大谷 哲範さん のプロフィール

 1960 年生まれ。ミュージシャン・音楽プロデューサー・依存症カウンセラー。
2009 年、水と緑の自然豊かな地域で新しい活動を実践するため山形市に移住。音楽活動に加え、山形市内でのカウンセリング・セラピーや中山間市域の活性化を目的として活動を行う「緑水の森再生委員会」を立ち上げる。
3.11の東日本大震災後、県外・県内にて様々な支援活動に携わるようになる。

緑水の森支援活動
住所 〒 990-2401 山形市平清水995-5
TEL 023-642-9480 FAX 023-642-9480
E-mail ryokusuinomor(アットマーク)yahoo.co.jp
※(アットマーク)を@に代えてください
ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/tetsnory
支援活動の経過
2011年
3月 震災支援活動を開始。(おもに宮城県での活動)県内避難者の増加を受け、県内での避難者サポートを開始
2012年
5月 社会貢献支援財団より「東日本大震災における貢献者表彰」を受ける
メンタルケアは
息の長い伴走支援

 「緑水の森」は、震災当初から被災地と山形県内で被災者、避難者、困窮者などのメンタルケアを中心とした対人援助をしています。放射能問題に対する考え方の違いによる家庭不和や離婚だけでなく、3.11をきっかけに幼少時からの潜在的な問題が浮上してしまうケースもあります。

 例えば、夫からDVや虐待を受けたと訴えた妻と子どもを保護する案件もありました。発端は夫婦間で放射能の危険性に対するとらえ方の違いから起きたいさかいなのですが、相談を受けていく中で、妻が幼少時に虐待の体験があったことが分かったんです。男性の強い口調が恐怖心を引き起こし、DVという解釈になってしまった。
 通常、DVのケースは母子を夫から保護することをメインに行いますが、夫側の聞き取りも必要ではないかと判断し、コンタクトをとったんです。妻側が持っていたトラウマを夫に理解してもらうなど、約半年かけてお互いの考えや気持ちを仲介する作業を何度も行いました。最近になって双方の誤解も解けはじめ、再び対面する機会もでき、ようやくほっとしているところです。
 潜在意識に閉じ込めていたトラウマなどは本人だけではなく、親子関係や生まれ育った家庭環境など、複合的な問題が起因しますから、解決までには時間もかかります。息の長い伴走支援です。

宮城でのボランティア活動
宮城でのボランティア活動
宮城で開催した復興支援のライブ
宮城で開催した復興支援のライブ
ピアノの音色は心を癒す
ピアノの音色は心を癒す
 

団体間のつながり

 震災から活動を続ける中で、当団体だけでなく、他にもいくつかの活動に発展しました。
 1つは、保養をメインとした『やまがた絆の架け橋ネットワーク』です。避難者に対する支援活動や被災地支援活動を行っていた複数の団体が連携し、それぞれの経験とノウハウを活かすことで、より広範囲の支援が出来ることを目的に発足しました。
 避難者は北海道から沖縄まで各地におりますが、福島から距離が近い山形は早い段階から支援の取り組みを始め、多くの経験を積んでいます。例えば遊びのプログラムを企画するにあたって大事な点は、避難者のお話を聞ける人がスタッフに紛れているかどうか。お子さんはもちろん親御さんも参加しますから、メンタルケアや社会的現状の理解、傾聴を学んでおく必要があります。
 最近は、保養支援をしている各地の団体に対してアドバイスを行う、スーパービジョンの取り組みも増えてきています。

 もう1つは、『JAST・日本ソーシャルセラピストアカデミー』です。対人援助・メンタル支援分野においてのJAST認定ソーシャルセラピストと、JAST認定クライシスカウンセラーを養成する講座です。
 緑水の森の活動をしていく中で、心のケアを必要としている人の多さ、それらの問題に応えていく人材の圧倒的な少なさや質の低下を痛感したことが、設立の動機です。

ソーシャルセラピストの講座 ソーシャルセラピストの講座

ソーシャルセラピストは人間存在を構成する三要素を深く理解し、自他へのトータルケアの実践や未来社会を築くためのメッセージを伝えられるプログラムになっています。クライシスカウンセラーは、災害・紛争などの危機的状況(クライシス)において、リアルタイムに起こる心の問題に臨機応変に対応し、トラウマケアからケースワーキングの能力までを身につけていく内容です。
震災がきっかけとなって、これまで抑圧してきた感情や思考が表にでてきたケースは大変多く、根本的の原因をケアも、JASTで学んでいきます。受講される方の得意分野に合わせたプログラムを提供している点も特徴です。

また、緑水の森は、自主避難者や関わる近親者など、行政の対象からこぼれてしまった人たちも支援しています。避難されている母子のお父さんが行方不明になってしまうケースもあるんです。NPOフードバンクの活動をしているので、仕送りがストップしてしまった困窮者へ食料を届けるといった生活支援、紙媒体のニュースレターを作成して配布する情報支援にも関わっています。
 常に個別の現場、お一人おひとりとどう関わるかを、ずっと大切にしてきたと思いますね。


社会の閉塞感を打破するために
団体間での協議も 団体間での協議も

 ここ最近感じているのは、人と人との関係が簡単に壊れてしまう危機感です。例えば福島の原発問題で、放射能の健康被害はあるのか、ないのか。「影響があると思っている人は味方。すぐには影響がないと思いっている人は敵」といった考え方。それがすごく進んでいます。
 本来は、相手が思っていることを尊重し、自分の考えも伝えるのが、大人としてのあり方ですよね。震災当初も、被災地ではNPO同士のケンカが起きていた。今やるべきことは、被災された人たちに1枚でも多く毛布をかけてあげること、あたたかい食べ物を提供することなのに、やり方の違いで揉めるという事態もありました。それが本質の齟齬(そご・意見や事柄が食い違うこと)になっていくんですね。
 特にNPOの場合、思いが強すぎてエゴに変わってしまうことが多いです。原因は、社会の閉塞感。それが個人の不安感につながって、何かを攻撃してしまうような心理状態になるんだろうと思います。解決していく方法は、時間をかけて本人が学んでいくしかないのですが、セクトの仲間割れが起きていくようなことを防止していきたいと思っています。

 最近は諍いが起きている団体同士の調整役を頼まれるケースも増えており、傾聴をベースとしてそれぞれの意見を通訳していくと、ちゃんと絡まった糸もほどけてくるんです。主張は違っても、それぞれに熱心に活動されていて、問題を解決していく力を持っている人がたくさんいます。調整役の体験を通して、社会の閉塞感というのは、それぞれの意見をじっくり「聴く」作業によって、解決していくんだという手応えも感じています。

〈取材:2015年9月〉




 取材を終えて
浅倉かおり
 薬物依存のカウンセラーからスタートし、徐々に対象の範囲が広がっていったという大谷さん。心の問題は複雑なケースが多く、長期に渡って関わっていくことがほとんどだそうです。マスコミなどでは紹介されにくい活動ですが、根本的な心のケアこそが、社会を変えていく力になるのだと思いました。
(浅倉かおり)
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