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葉っぱ塾

 「森の休日」は、原発事故以来、放射線量の高い地域に住んでいるため屋外での遊びが制限されている子どもたちとその家族を山形に招いて、週末の2日間、自然の中で過ごして少しでもストレスを解消してもらおうと行っているものです。こうした保養のニーズがますます高まる中、〝息の長い支援〟をめざす「葉っぱ塾」の活動についてお聞きしました。(取材:たなか ゆうこ)
やまがた避難者支援団体 活動インタビュー Archive number 002
 葉っぱ塾
はっぱじゅく

葉っぱ塾 代表 八木文明さん プロフィール
代表 八木文明さん(やぎふみあき)さん

山形県長井市在住。高校教員在職中の2000年から「葉っぱ塾」の活動を開始。朝日連峰やその周辺を主な活動場所に、登山、ハイキング、子どもキャンプ、農業体験(田んぼオーナー・リンゴの木オーナー)など、さまざまな自然体験活動を行っている。(社)日本山岳ガイド協会認定ガイド、東北山岳ガイド協会会員、(社)IPNET-Jスクール・インタープリター主任講師、(財)日本自然保護協会自然観察指導員、(社)日本シェアリングネイチャー協会コーディネーター、山形県災害ボランティア・アドバイザー、(財)日本熊森協会山形県支部長、山形県農村環境保全指導員 

 ■「葉っぱ塾」八木文明の問合せ先
〒993-0053 山形県長井市中道2丁目16-40
TEL: 090-5230-8819  FAX: 0238-84-1537
E-mail:happa-fy(アットマーク)dewa.or.jp アットマークを@にしてお送りください。
http://blog.livedoor.jp/happajuku/  

 ■葉っぱ塾ボランティア支援募金
郵便振替口座番号  02420-5- 19722
加入者名        八木文明
※通信欄に「ボランティア支援」とご記入ください。
長く支援を続けるため「ボランティア支援募金」
主な被災地支援活動(☆は現在も継続中の活動)
☆通信「ブナの森から吹く風 LEAF」
1996年~ 不定期で発行、2015年6月29日発行で第173号
☆「葉っぱ塾」
2000年~ 活動を開始、2008年4月より「葉っぱ塾」に専念

・「アウトドア義援隊」の緊急物資支援活動

2011年3月18日~4月19日

天童市にてアウトドアメーカー・モンベルが呼びかけた「アウト ドア義援隊」の緊急物資支援活動にボランティア・コーディネーターとして参加

・「アウトドア義援隊」有志による作業ボランティアに参加(東松島市)
2011年 ゴールデンウィーク~2013年12月

☆「葉っぱ塾ボランティア支援募金」 

2011年5月 呼びかけを開始
・「山形こころのサポーター」に参加
2012年1月~2月 石巻市内の在宅被災者への個別訪問活動に山形からバスで4回通う
・山形大学人文学部でのボランティア活動についての出前講義
2012年 2012年度の山形大学「災害復興学」での被災地(東松島市)スタディ・ツアーへの協力につながる
☆陸前高田市「花っこ畑」への支援活動
2012年1月~ 吉田正子さんを中心とした花畑つくりへの資金・物資提供と労力での協力など

☆東松島市の小野仮設住宅、海苔養殖復活などへの支援

2012年4月?

小野仮設住宅の女性たちがつくる「おのくん」製作への協力、現地の海苔養殖復活のお手伝い  

☆福島の子どもたちとその家族のための週末保養「森の休日」《最重点活動》

 2012年5月  「Asahi自然観」を会場に開始
 ☆福島の子どもたちのための「子どもキャンプ」
 2012年11月  開始
 ☆二本松市、岳下住民センター仮設住宅の女性たちの布製品製作への協力
   布地の提供や、製品の販売協力の呼びかけを行っている

☆福島から山形に避難してきている家族へのさまざまな支援

   

─東日本大震災の直後からボランティアとして支援活動をされたそうですが、発災の2か月後という早い段階で「葉っぱ塾ボランティア支援募金」の呼びかけを始められたのは、どのようなきっかけだったのですか?

《八木》 登山やハイキング、子どもたちのキャンプなど、地域の自然を生かした自然体験活動をライフワークにしたいと、2000年に「葉っぱ塾」の活動を始めました。「おとなも子どもも森で遊べ」がテーマで、朝日連峰や地元の長井葉山などで四季を通じて活動しています。

 高校の教員を早期退職するまでは〝二足のわらじ〟でしたが、2008年の4月から「葉っぱ塾」に専念しました。それから丸3年がたとうとする頃に、あの東日本大震災が起きたのです。ようやく「葉っぱ塾」の活動が知られるようになって行事やガイドの依頼が増えていたのですが、それが震災ですべてキャンセルになりました。

 そうした中で、山形の知り合いからメールがきました。「アウトドアメーカーのモンベルが、民間の緊急物資支援活動『アウトドア義援隊』を始めるので人手がいる。一緒に行く人はいないか」という内容でした。阪神淡路大震災のときは仕事があり、何もできずに歯がゆい思いをしたので、「何かお手伝いしたい」という気持ちが強くあったものですから、このメールに応えて参加することにしました。それで「アウトドア義援隊」に参加し、3月18日から1か月間、拠点となった天童の空き工場で、ボランティア・コーディネーターとして、全国から次々と運ばれてくる大量の支援物資の仕分け作業をたくさんのボランティアの方々と共に行いました。

「アウトドア義援隊」での活動
「アウトドア義援隊」での活動

  私が初めて被災地に向かったのは2011年4月6日です。石巻へ行きました。被災からまだ1か月も経っていなかった現地のすさまじい津波被害の状況を見たときの衝撃は、今も忘れることができません。その後、ゴールデンウィークに、「アウトドア義援隊」でつながった有志の人たちと「現地で支援活動をしよう」と、物資支援で何度も訪れた東松島に行き、それからしばらく東松島に通うようになりました。

初めて訪れた石巻で(2011年4月6日)
初めて訪れた石巻で(2011年4月6日)

 私は、このとき考えました。被災地に駆けつけるボランティアの人たちは、ほとんどが手弁当です。ボランティアなので当たり前といえば当たり前ですが、経費は個人の負担で、私自身も、それまでかなりの持ち出しがありました。この大震災の復旧・復興にはかなり長い年月がかかるのは明らかで、その支援をする私たちに一番求められるのは、長く続けていくことです。でも、支援したい思いはあっても、自分のポケットマネーだけではとても支えきれません。それで、長く支援を続けるためには、活動資金を集める仕組みをしっかりつくらないといけないと思いました。 

 そこで、「葉っぱ塾」を始める4年前から発行している通信『LEAF』で、「ボランティアする私たちの活動を支えてください」と呼びかけを始めました。それが震災から2か月後の2011年5月上旬から呼びかけを開始した「葉っぱ塾ボランティア支援募金」です。全国に180人くらい『LEAF』をお送りしている方がいて、「多くの人々が少しずつ負担を分け合うことで、被災地を息長く支援したい」という趣旨に賛同してくださった方から1000円・2000円・5000円と少しずつお金が届くようになりました。そのお金が詰み上がって10万円20万円となっていったのです。

八木さんが編集発行している通信「LEAF」
八木さんが編集発行している通信「LEAF」

 この支援募金のお金は、とにかく今お金が必要だという活動に役立ててもらおうというもので、当初は「アウトドア義援隊」の東松島での活動に主に使ってもらいました。その後、陸前高田にボランティアバスを運行していたボランティアサークル「日曜奉仕団」や、山形で暮らす福島からの避難者の帰省バスを運行していた「山形ボランティア隊」など、他の支援団体にも資金提供しました。

  震災のとき、多くの人が「何かしなくては」とあちこちで募金をしました。でも、募金してもちゃんと必要な人に届いているのか、何に使われているのか、わからない。それでは、みんなの支援したい気持ちを支援の必要な人につなげることは難しい。そうした思いもあって、「葉っぱ塾ボランティア支援募金」は半年に一度くらいの割合で報告書をお送りするようにしてきました。「いくら募金が集まって、こういう活動にいくら使いました」という会計報告で、これまでもう10回出しました。

 北海道から九州まで、募金に協力してくださる方がいらっしゃって、これまでの募金は累計で874万円余りに上り、支援活動に支出したお金は750万円ほどになります。呼びかけを始めたときには、こんなに集まるとは想像もしていませんでした。助成金に頼らず、「森の休日」をはじめ震災支援に必要な資金を全てこの募金でまかなっていますので、本当にありがたいですね。

 「震災や原発事故のことを忘れないで応援し続ける」という意味でも、一つの仕組みとしての「葉っぱ塾ボランティア支援募金」の意義は小さくないと思っています。

「森の休日2014」7月
「森の休日2014」7月

「森の休日2014」8月
「森の休日2015」5月
「森の休日2015」5月
 
自然体験活動のノウハウ活かし無理なくできる支援を

─福島では原発事故以来、子どもたちは外で遊ぶことが制限されています。そうした子どもたちが親子で参加する短期保養プログラム「森の休日」を企画して、現在も継続していると伺いました。

《八木》 東松島に作業ボランティアに通うかたわら、2012年の1月から2月にかけて4回、石巻への傾聴ボランティアバスに参加しました。被災者の家を一戸一戸訪問して、声を聞いて回るという活動です。それが終わって、3月の初めに参加者の有志が集まって振り返りをしたとき、「震災から1年がたち、これから何ができるか」という話になりました。そのとき、避難せず福島で暮らしている子どもたちに「保養」という形の支援が必要とされていることを初めて知ったのです。

 その頃、「葉っぱ塾」本来の活動を少しずつ復活させながら、ボランティア活動にも関わっていたのですが、この大きな震災、原発事故を考えたときに、長く支援活動をしていくためには、無理なくやれることで何かお手伝いすることが必要と考えていました。「葉っぱ塾」本来の自然体験活動のノウハウを支援に役立てることはできないだろうか…と。「保養」の話を聞いたのは、ちょうどそんなときです。「葉っぱ塾」では震災の前から、子どもキャンプを行ったり、朝日町の宿泊施設「Asahi自然観」に20人から30人の有志が集まって、1泊2日の「ブナの森セミナー」を開催していたので、子どもたちの「保養」もその手法でやれるのではないかと考えました。

 福島を訪ねてみると、表面的には平穏に見えても、福島市や伊達市、郡山市などでは、あちこちに放射線量が極端に高いホットスポットがあって、子どもたちの外遊びが制限されている状況でした。

 そこで、福島に住んでいる親子が一緒に参加できる週末保養の取り組みを計画して、2012年5月からスタートさせました。継続的に行っていくには資金の問題や受け入れスタッフの問題をクリアしなければなりませんでしたが、「葉っぱ塾ボランティア支援募金」のお金が30万くらいあったので、その財源を活用して、夏休みまでなら何とか続けられるかもしれないと思い、5月から7月までの5回計画しました。スタッフは、被災地に一緒にボランティア活動に行っていた人たちの人脈を頼って呼びかけ、手伝ってもらうことになりました。

 「福島に保養を必要としている人がいる」と聞きましたが、最初はまったく手探りで、その人たちとどうやってコンタクトをとったらいいか、わかりません。そうしたら、福島で子どもたちを放射線から守る活動をしている団体があるというので、そのホームページに保養情報を出したところ、少しずつ参加希望が届き始めたのです。初回は3家族10人でした。

 その年の夏に5回「森の休日」を実施しているうちに募金がさらに集まり、秋も実施できそうなメドがついたので秋にも5回。そして、冬の間お休みしている間にまた募金が集まったので、2013年もできそうだと。毎回毎回その繰り返しで、これまで続いてきました。2015年7月までに通算40回を数え、毎回3家族から4家族、延べ155家族が参加して、この秋も9月から5回、予定しています。

ツリーイングを体験
ツリーイングを体験
草の斜面を段ボールで滑り降りる子どもたち
草の斜面を段ボールで滑り降りる子どもたち
葉っぱに穴をあけてお面に
葉っぱに穴をあけてお面に
 

福島の親子がブナの森でリフレッシュする「森の休日」

─「森の休日」に参加した子どもさんや親御さんの感想はいかがですか?

《八木》 「森の休日」は朝日連峰の中腹にある「Asahi自然観」を会場に行っていて、まずブナに囲まれた空気神社にお参りしてからスタートします。「何時から何時まで○○をする」という計画はあまり立てないようにし、基本的に子どもたちがしたいことをして遊びます。ですから子どもが8人いれば、スタッフの数も最低それぐらいはいないと、1対1の対応ができません。木登りをしたり川遊びをしたり、段ボールで草の斜面をすべったり、花をつんだり。子どもたちは外で思いっきり遊べること、何気ないことが楽しくてしかたないんですね。それに、これは福島の子だけではないですが、大人が真剣になって子どもと遊ぶという場がなかなかありませんから。保養に来たときと帰るときとでは、子どもたちの表情はまったく違います。「帰りたくない」と泣いてしまう子もいるんですよ。

 親御さんたちも放射能の不安でストレスを抱えていますが、「森の休日」ではスタッフに子どもを預けてゆっくりできる。子どもたちが遊んでいる間に、おしゃべりしたりお茶を飲んだり、明るいうちからワインを飲んだり、それが日頃のストレスの解消、心身のリフレッシュになっているようです。

 参加したご家族からは、「あまり遠くない山形で、普通の週末に家族でゆっくり過ごせるのが、ありがたい」「子どもたちが外で、のびのびと遊んでいる姿が、親としてとてもうれしい」といった声をいただいているんですよ。

紅葉を満喫する秋の「森の休日」
紅葉を満喫する秋の「森の休日」
大きな枯れ葉も遊び道具に
大きな枯れ葉も遊び道具に
雪遊び
雪遊び
 

  この活動をボランティアで支えてくれるサポーターの裾野も広がってきました。震災直後は、ボランティアというと被災地での活動と考えられましたが、「被災地には行けないけれど、何かしたい」という人がたくさんいました。それで、「森の休日」のような活動だったら、「私は台所を手伝います」とか、「私はお母さんの話の聞き役をします」という人が集まってくれました。これまで参加してくれたスタッフの総数は250名近いんですよ。福島から山形に避難している方、遠く関東関西からもスタッフとしてかかわってくれる方もあり、さらには山形大学や東北文教大学の学生さんたちも大勢参加してくれるようになって、本当に助かっています。

ゆっくり語り合うご家族とスタッフ
ゆっくり語り合うご家族とスタッフ

 参加費は、大人が2,000円、小中高生が1,500円、幼児は1,000円いただいています。「森の休日」をスタートした当初、全国各地で無料ご招待の保養が多かったのですが、「ありがたいけれど、申し訳なさも増す」という福島の方の声を聞きました。私たちにとっても、この取り組みをできるだけ長く継続していきたいので、参加者の方からも少し負担していただくことにしたのです。

 以前から親交があり、「葉っぱ塾」を始めるきっかけをつくってくださった画家で詩人の葉祥明(ようしょうめい)さん、原爆詩の朗読会をお願いして2005年に小国町に来ていただいて以来交流のある女優の吉永小百合さんも、支援金やご自身の書籍・CD、Tシャツなどを提供して、「葉っぱ塾」の活動を支援してくださいました。こんな小さな活動にも目を向けていただき、ほんとうにありがたいと感じています。

─震災から4年半になりますが、「葉っぱ塾」では今後はどのような支援活動をしていくのか、お聞かせください。

《八木》 いつも「森の休日」には3家族か4家族の参加ですから、一度も顔を合わせたことのない人もいます。それで、「森の休日に参加したことのある人が、できるだけたくさん集まれる〝同窓会〟みたいなことをしたい」という、うれしい提案が福島のお母さんたちからあって、今年最後の11月14日・15日に「森の休日同窓会」を開くことになりました。20家族ほどが参加する予定です。「森の休日」で出会った福島のご家族同士が交流を深めることで、少しでも厳しい状況を乗り越えるエネルギーを得てもらえれば…と願っています。

  今年の春・初夏の「森の休日」のときには申込みが多く、受け入れることができなくてお断わりした家族が7家族も出てしまいました。このご家族は、秋に優先的に参加していただきますが、それだけ「保養」が必要とされているのだと感じますね。

 「森の休日」に参加している子どもたちの中にも、甲状腺検査で「のう胞あり」と判定されている子どもがいます。福島の放射能の状況は、数年では改善しないでしょうから、「森の休日」に通ってもらうことで、子どもたちの成長を見守りたいという思いもあるんですね。

 「葉っぱ塾」の活動は、小さな取り組みにすぎませんが、「葉っぱ塾ボランティア支援募金」も「森の休日」も、できる限り長く続けていきたいと考えています。


 
〈取材:2015年8月25日〉


 取材を終えて
たなかゆうこ

 放射能の不安の中で暮らしている福島の子どもたちや親御さんにとっては、山形で過ごす「森の休日」の2日間が、本当に貴重な癒しの時間になっているのですね。時間がたつにつれて、ますますこうした「保養」が必要になると思いますので、ぜひ「森の休日」を長く継続していただきたいと思います。そのためにも、「葉っぱ塾ボランティア支援募金」のように、多くの人が無理のない範囲で募金し支え合う大切さを実感しました。ありがとうございました。 

たなか ゆうこ
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