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走れ!! わぁのチャリ

山形大学農学部(鶴岡市)の学生ボランティア・プロジェクトとして、不用になった中古自転車を修理・整備して被災者や避難生活者に贈る活動を続けている『走れ!! わぁのチャリ』。現在は、自転車の提供のほか、小学生と一緒に育てた花を被災者に贈る花プロジェクト、福島などから鶴岡に一時的に疎開する避難者のサポートなど活動の幅を広げ、復興支援活動を展開しています。(取材:たなかゆうこ)
やまがた震災支援活動アーカイブ Archive number 002
山形大学農学部 東日本大震災復興支援のための学生ボランティア・プロジェクト
走れ!! わぁのチャリ
はしれ!! わぁのちゃり


走れ!! わぁのチャリのみなさん プロフィール
菊池俊一(きくちしゅんいち)さん<写真中央>
  山形大学農学部食料生命環境学科森林科学コース准教授。青森県青森市出身。2009年10月より現職。『走れ!! わぁのチャリ』アドバイザー。
菅原暢文(すがわらのぶふみ)さん<写真後列左から2人目>
  山形大学農学部生物生産学科4年、山形県鶴岡市出身。
  2012年4月より『走れ!! わぁのチャリ』の代表を務める。
橋谷田恵司(はしやだけいし)さん<写真後列右から2人目>
  山形大学農学部生物環境学科4年、福島県喜多方市出身。
保科美有(ほしなみゆ)さん<写真後列右>
  山形大学農学部生物資源学科3年、山形県村山市出身。
林 香名(はやしかな)さん<写真後列左>
  山形大学農学部生物環境学科4年、富山県高岡市出身。
2011年4月20日、山形大学農学部の学生有志24人に社会人も参加して、『走れ!! わぁのチャリ』を発足。名称の「わぁ」は、地域の人たちと協力して活動していくことから、庄内地方の方言で「わたし・あなた」を意味する「わぁ」、自転車の車輪の「輪」、人と人とのつながりを表す「和」の3つの意味が込められている。メンバーは、メインスタッフの学生10人のほか、随時参加の学生10数人。2012年「やまがた公益大賞」*を受賞。
◎山形大学農学部 学生ボランティア・プロジェクト「走れ!! わぁのチャリ」
 http://bikesofhope.web.fc2.com/

*やまがた公益大賞=公益活動に対する県民の関心を高め、積極的な参画を促すとともに、NPOをはじめとした県民の公益活動をより活性化していくため、2007年より優れた公益活動を顕彰している。


支援活動の経過
2011年
4月20日 山形大学農学部 東日本大震災復興支援のための学生ボランティア・プロジェクトとして正式に発足。中古自転車の整備・修理を開始
4月21日 宮城県塩釜市浦戸諸島野々島へ修理した自転車を届ける(以後、被災者・避難生活者の自転車提供を継続)
7月21日 鶴岡市立朝暘第一小学校にて「花プロジェクト」開始
7月25日 「山形大学・元気プロジェクト」の支援団体に採択される
8月 山形大学小白川キャンパス(山形市)に小白川支部を設立
8月27日 「フクシマの子どもの未来を守る家」~森遊び~を山形大学演習林にて実施
10月22日 宮城県東松島市へのボランティアバスを運行
11月1日 鶴岡市山王商店街に「まちなか基地」を開設(2012年9月まで)
12月11日 「知の拠点庄内発足シンポジウム~3.11震災と向き合う学術~」に参加
2012年
1月5日 福島から一時疎開してきた家族との「もちつき交流会」に参加
1月12日 鶴岡市立朝暘第一小学校にて「花プロジェクト」の報告会を実施
3月11日 キャンドルを灯し、これまでの1年を振り返り、これから(未来)を考える「1年目の Candle Night」を市民とともに実施
6月28日 鶴岡市立朝暘第三小学校にて「花プロジェクト」開始
9月8日・14日 鶴岡市立朝暘第三小学校の4年生が育てた花を宮城県南三陸町の仮設住宅に届ける
12月 「まちなか基地」を鶴岡駅前商店街に移転開設
農学部のプロジェクトとしてスタート

〈菅原〉 震災直後、同じ農学部の先輩の戸貝直樹(とがいなおき)さんが被災地にボランティアに行きました。被災地では、津波で自家用車や自転車を流されて、多くの人が歩いて移動したり、避難所と物資の配給所の間を重い荷物を持って運んだりしている状況でした。そこで、被災者の方の「自転車があれば…」という声を聞いて、「大学に放置されている自転車を修理して、被災地に届けることはできないだろか」と考えたのが、この『走れ!! わぁのチャリ』(※以下、『わぁのチャリ』)の始まりです。
 僕自身、震災の日に、たまたまテニスの大会があって仙台にいて、家に連絡もつかないまま2日間、体育館で避難生活を経験しました。鶴岡に帰って来て、「自分も何かしなくてはいけない」と思いましたが、救援物資の毛布を送るくらいで、何をしたらいいのか、わかりませんでした。そんな時、前代表の戸貝さんが、被災地に自転車を贈る活動を始めたと知って、僕も参加したんです。

〈菊池〉 震災後まもなく、戸貝くんから、「中古の自転車を修理して被災地に贈りたい」と相談されました。これはとてもいい考えでしたし、私自身も大学人、東北人として何かしたい…という思いがありましたから、学生と一緒に活動をスタートしたんです。もちろん活動資金もなく、みんな手弁当です。
 ですが、この時、考えました。これから、ほかにもいろいろなボランティア活動をやりたいという学生が出てくるだろう。東日本大震災という未曾有の災害に直面した学生が、いま自分たちに何ができるかを真剣に考えて、実際に行動に移すことは、大学の教育の一環としてもいい課題になるのではないか。そうした学生の活動を支援することも、大学の役割ではないだろうか…と。そのことを学部長に話したところ、賛同していただいて、農学部全体の復興支援プロジェクトとしてやっていこうということになったわけです。
 ですから、プロジェクト発足のきっかけとなった自転車の提供に限らず、被災者の方たちがどんな支援を求めているか、学生たちが感じとって発案したさまざまな復旧・復興支援活動が加わって、次第に『わぁのチャリ』の活動の幅が広がっていきました。

〈菅原〉 『わぁのチャリ』では、自転車提供のほか、東松島市に出向いて住宅や道路・側溝などの泥かき作業、庭や畑のゴミ回収・清掃作業、瓦礫の撤去など、被災者の生活環境の復旧作業も継続して行ってきました。
 被災者の方の「生きがいがほしい」「生活に潤いがほしい」というニーズに応えて、JA鶴岡さんから協力していただいて、花や野菜の苗を届ける活動も続けてきましたし、昨年の10月には「ボランティアバス」を企画して、学生や市民の方40名を超える参加者で、東松島市の野蒜(のびる)地区に行き、避難路の整備をしました。
 現在は、「中古自転車の修理と提供」「地元(鶴岡)の小学生と一緒に育てた花を被災者に贈る花プロジェクト活動」「福島などから一時的に疎開してきた家族の、鶴岡での暮らしをサポートする活動」の3つを中心に活動しています。


中古自転車の修理と提供
本格的な活動を開始。修理した中古自転車をワゴン車に積み込む(2011年4月21日)
本格的な活動を開始。修理した中古自転車をワゴン車に積み込む(2011年4月21日)

〈橋谷田〉 中古自転車の提供は、まず、不用になった自転車を集めることから始めました。市民の皆さんに「古い自転車はありませんか?」とチラシなどで広く呼びかけたり、市や大型小売店などが持っている放置自転車を提供してくれるようお願いしたんです。
 震災から約1ケ月半後の4月20日に『わぁのチャリ』を発足して、その日、キャンパス内に設けた「自転車整備・修理スペース」で、市内の自転車店の方から教わった整備や修理の技術を使い、6台の中古自転車を修理しました。
 そして次の日、このうちの4台と知り合いから譲り受けた3台の自転車をワゴン車に積んで、さっそく宮城県塩釜市浦戸諸島にある野々島に届けに行きました。これが第1回目です。
 ちょうど『わぁのチャリ』の活動が新聞に掲載されて、県内各地の方から「不用自転車を提供したい」と申し出があったため、4月23日・24日に農学部のキャンパスで一斉収集会も行って自転車を受け入れました。庄内の回れる範囲で出張回収もしたので、2日間で32台もの中古自転車が集まったんです。
 この中古自転車を数日かけて、それぞれが空いた時間を使って、暗くなって作業ができなくなるまで整備・修理しました。そして4月29日に、無償で輸送してくださるトラックに自転車20台を積み込んで、石巻市の湊小学校避難所へ、学生5人で届けに行きました。
 それから、こうした自転車の提供をずっと続けています。

キャンパス内で中古自転車を整備・修理(2011年5月14日)
キャンパス内で中古自転車を整備・修理(2011年5月14日)

〈菊池〉 この年の11月には、鶴岡市内の山王商店街の空き店舗をお借りして、『わぁのチャリ』の活動拠点「まちなか基地」をオープンしたんですよ。中古自転車の受付と冬場の自転車修理を行うための場所です。
 『わぁのチャリ』の活動を広く市民の方に知ってもらい、参加してもらうための広報基地にする目的もあります。地域の皆さんから見ると、大学はやはり、ちょっと敷居の高いところがあるのかもしれません。だったら逆に、こちらからキャンパスの外に出て、街中に活動拠点を設けて、学生たちが自転車の修理をしている様子とか、活動を見てもらおうと考えたんですね。
 「まちなか基地」を開けるのは週に3日ですが、実際にここをきっかけに『わぁのチャリ』を知って、自転車を提供してくれた方がいたり、修理を手伝ってくれる方がいたり、地域との交流も生まれました。
 この山王商店街の「まちなか基地」は今年の9月までで、12月から鶴岡駅前商店街に移転して再開する予定です。

鶴岡市山王商店街に開設した「まちなか基地」(2011年11月~2012年9月開設)
鶴岡市山王商店街に開設した「まちなか基地」(2011年11月~2012年9月開設)

宮城県女川町の男性から「女川町をめぐる自転車道をつくるための調査にサイクリング車がほしい」と要望があり、数か月後にようやく届ける(2012年10月6日)
宮城県女川町の男性から「女川町をめぐる自転車道をつくるための調査にサイクリング車がほしい」と要望があり、数ヶ月後にようやく届ける(2012年10月6日)

〈橋谷田〉 これまで要望のあった方に、150台を超える自転車を提供しました。「ありがとう、待っていたよ!」と喜んで受け取ってもらうと、修理して届けてよかった…と本当にうれしくなりますね。
 主に宮城県の石巻市や南三陸町、女川町など、津波の被害にあった地域に届けていましたが、今年になって福島から鶴岡・酒田に避難している方の要望も増えたので、いまは被災者と避難生活者の方の両方に提供しています。被災地だけでなく、自分たちの身近なところで支援を必要としている方がいることを、今年の活動で実感しました。
 これからも引き続き、不用自転車の提供元の確保、自転車の整備・修理、要望のあった被災者・避難生活者への自転車の提供を行っていきます。
 ただ、現在のメンバーのほとんどが4年生ということもあって、就職活動や卒業論文の研究などで忙しく、今年は、昨年のように大勢で集中的に修理することが難しい状況になりました。そこで、6月中旬から、みんなの時間が空いている朝の6時半から8時まで修理を行いましたが、自転車修理をできる人が少なく、作業効率が低いのが現状です。新たなメンバーを確保しようと勧誘活動も行ったのですが、なかなか集まりません。
 そのため、学生のメンバーだけでなく、「まちなか基地」を活用して市民の方とも協力しながら自転車修理を進める体制をつくっていきたいと考えています。

 

小学生と一緒の花プロジェクト
鶴岡市立朝暘第三小学校の4年生に「花プロジェクト」の説明を行う(2012年6月28日)
鶴岡市立朝暘第三小学校の4年生に「花プロジェクト」の説明を行う(2012年6月28日)

〈菅原〉 未来を担う子どもたちにも、震災や被災地の復興についてより身近に感じてもらい、ともに考えていきたいという思いから、僕たち大学生と小学生が一緒に花を育てて、咲いた花を被災した方に贈ろうと思ったのが、花プロジェクトを始めたきっかけです。
 それと、ボランティア活動をしている中で、大学生と地域のつながりが薄いと感じたこともあります。僕は地元の鶴岡出身ですが、せっかく他県から山形大学に入学して鶴岡に来たのに、市民の方々と交流のないまま卒業していってしまうのはもったいない。まずは小学生と交流できる場があれば…という気持ちもありました。
 去年は、鶴岡市立朝暘第一小学校の2年生と一緒に種をまき、花を育てて、気仙沼市立九条小学校に届けました。校長先生から「ありがとう」のメッセージをいただいて、また、朝暘一小の2年生からは「花を育てるのは大変だったけど、『ありがとう』という言葉をもらってとてもうれしかった」と言われて、いいプロジェクトになったと思っています。
 今年は、朝暘第三小学校の4年生の皆さんと一緒に育てた花を、南三陸町の仮設住宅に届けてきました。被災者の方から、「花が好きだから、とってもうれしい」「仮設だけど、玄関がきれいに見えるようになった。ありがとう」と喜ばれて、うれしかったです。

朝暘三小の小学生と一緒に花の種まく(2012年6月28日)
朝暘三小の小学生と一緒に花の種まく(2012年6月28日)
種をまいて、みんなで水やり。この後、小学生は夏休み中も当番を決め、毎日水やりをした(2012年6月28日)
種をまいて、みんなで水やり。この後、小学生は夏休み中も当番を決め、毎日水やりをした(2012年6月28日)
「やった~、咲いたぞ!」。花が咲いて大喜びの小学生たち(2012年9月7日)
「やった~、咲いたぞ!」。花が咲いて大喜びの小学生たち(2012年9月7日)
 

〈菊池〉 朝暘三小は大学のすぐ隣ですから、一緒に花プロジェクトをやりたいと以前から考えていました。去年の秋、『わぁのチャリ』が企画した「ボランティアバス」にたまたま朝暘三小の先生が参加されていて、学生たちが一所懸命やっているのを見てくださって、そうしたつながりから今年、実現したんですよ。

〈菅原〉 いまは朝暘第六小学校の4年生の1クラスが、父兄と一緒に各家庭で、水耕栽培でヒヤシンスやクロッカスを育てています。12月中旬から咲き始めるので、その時に、これまで自転車や野菜の苗を届けてつながりのある石巻市や南三陸町の仮設住宅に持っていきたいと考えています。

〈菊池〉 いろいろな人に花を配るのではなく、石巻市や南三陸町に届けるのは、『わぁのチャリ』の名前にも人と人とのつながりを表す「和」という意味を込めたように、一度できた「つながり」を大切にしようということなんですね。
 何度も足を運ぶことで交流が生まれ、会話が始まり、そこでようやく被災した方も心を開いて話してくださる。学生はそれをしっかりと聞いて、被災者の気持ちやニーズを知り、つぎの活動に生かす。こうした地道な活動を大事にしています。

きれいな花と小学生の温かい気持ちをワゴン車に積み宮城県南三陸町へ(2012年9月14日)
きれいな花と小学生の温かい気持ちをワゴン車に積み宮城県南三陸町へ(2012年9月14日)
南三陸町の仮設住宅へ花を届け、「玄関がきれいになる」と喜ばれた(2012年9月14日)
南三陸町の仮設住宅へ花を届け、「玄関がきれいになる」と喜ばれた(2012年9月14日)
お花のお礼に「遠いところ、ありがどね。おにぎり食べれっ」(2012年9月14日)
お花のお礼に「遠いところ、ありがどね。おにぎり食べれっ」(2012年9月14日)
 

福島からの一時疎開家族のサポート
福島から一時疎開してきている家族たちとの「もちつき交流会」に参加(2012年1月5日)
福島から一時疎開してきている家族たちとの「もちつき交流会」に参加(2012年1月5日)

〈保科〉 鶴岡市に「フクシマの子どもの未来を守る家」という団体があります。元保育士の方が、放射能の不安の中で子育てをしなければならなくなったお母さんのために、福島から一時的にでも鶴岡に疎開して暮らせるよう「家」を用意して、支援しようと始めた活動で、『わぁのチャリ』もそのサポーターとして協力しています。
 私たちは学生なので、子どもの遊び相手とか、楽しく過ごしてもらうための、ちょっとしたお手伝いなんですが、もちつき大会や湯野浜での海水浴、赤川河川敷での外遊びなど、いろいろな活動に参加しました。
 その時の写真を見ると、ただ子どもたちが遊んでいる写真、旅行の思い出にしか見えないかもしれませんが、いま福島の子どもたちは、こういった外遊びができません。私たちは子どもたちと一緒に遊んでいるだけなんですが、お母さん方は鶴岡に来て「普通の生活」ができたと、それだけで喜んで福島に帰っていかれます。
 こうしたイベントでの支援のほかに、「守る家」の整備や雪かきを手伝ったり、サポーター学習会にも参加しました。

〈菊池〉 被災地に行くことだけが支援ではないんですね。いま、自分ができることがたくさんあるはずですから、まず一歩踏み出す。学生には、行動することが大事だと気づいてほしいですね。

〈保科〉 福島のご家族と接していて思ったのは、「普通の幸せ」ということです。いま、自分たちが普通に得られているこの幸せ、この暮らしが幸せなんだな…と気づかされました。
 それに、福島のお母さん方の話を聞くと、まだ震災は続いている…と実感します。ただ、震災から1年8ケ月がたって、学内でもあまり話題にならなくなりましたし、「震災の風化」が始まっていると感じます。
 『わぁのチャリ』の活動に参加してくれる人も、だんだん少なくなってきているので、もっと関心をもってもらえるよう広報のやり方も工夫していきたいです。


これまでの活動を振り返って
山形大学農学部祭「鶴寿祭」の活動報告会にて展示したパネル(2012年11月25日)

〈菊池〉 プロジェクトの運営という面で、林くんの存在は大きいですよ。『わぁのチャリ』のエンジンのような存在、縁の下の力持ちですから。

〈林〉 私は、『わぁのチャリ』の活動全般に関わっていて、事務的な手続きから活動を広く知ってもらうためのチラシやパネルの作成など、ボランティア活動のサポートをしています。
 こういう裏方をやってみて、実際に一つのプロジェクトを行っていくには、活動をベースで支えるための細かい仕事がいろいろあって、それが結構重要だということに初めて気づきました。
 『わぁのチャリ』は、「みんなと一緒にやろう!」という気持ちになります。何か一つのことをやろうとする時に、いい仲間、同じ気持ちを持った人が集まるというのは、大きな力になるんだということを知りました。ボランティア活動としてだけでなく、自分の人生経験として、すごく勉強になっています。

山形大学農学部祭「鶴寿祭」の活動報告会にて展示したパネル(2012年11月25日)
山形大学農学部祭「鶴寿祭」の活動報告会にて展示したパネル(2012年11月25日)

〈菅原〉  今年4月から代表を務めて、被災地が抱える問題や復興への課題の大きさを実感する一方で、ボランティア活動を通していろいろな方と交流して、人と一緒に何かをすることの大切さや面白さを感じました。
 そして、社会と関わり、社会の役に立つ活動を続けていきたいという思いが強くなって、いまは、将来そうした道に進みたいと考えています。『わぁのチャリ』がなければ、別の道を選んでいたかもしれません。

〈菊池〉 今年の「やまがた公益大賞」に選ばれ、『わぁのチャリ』の活動を評価していただきましたが、市民の皆さんをはじめ多くの方々のご支援ご協力があったからこそと感謝しています。
 農学部のプロジェクトとして活動してきたわけですが、教育的な面から見ても意義のある活動で、学生たちは『わぁのチャリ』の活動を通してさまざまな体験をして、人間として飛躍的に成長したと思います。
 山形大学には「元気プロジェクト」といって、毎年、学生から“山形”や“東北”を元気にすることを目的にしたプランを募集して、学生の意欲的な活動を支援する制度があります。この「元気プロジェクト」は、活動の目的や目標・内容などを書類と面接・プレゼンテーションで審査するもので、『わぁのチャリ』も応募して、2年連続で選ばれて助成金をいただきました。その他にもいくつかの団体・機関から活動助成をいただきました。活動を進める上で、どのように必要経費を捻出していくのか。こうしたことも、学生たちには貴重な経験になったと思いますね。


今後の活動と課題

〈菅原〉 中古自転車を整備・修理して必要な人に届ける活動と、福島から鶴岡に一時疎開している家族をサポートする活動は、これまでと同じように継続していきます。
 「被災地のいま」を積極的に発信していこうと、『わぁのチャリ』では、鶴岡市内で行われるイベントに参加して活動の紹介や報告をしたり、ホームページやブログ、Facebook(フェイスブック)などで紹介してきました。これからも「まちなか基地」を拠点に被災地の情報を発信していくつもりです。
 そして、『わぁのチャリ』の活動をもっと多くの方に知ってもらえるよう、いろいろなイベントに参加して、市民の方とのつながりを強めたいと考えています。震災への関心や意識が薄れてきていると実感していますが、それをただ悲観するのではなくて、自分たちが震災を忘れないで発信していけば、決してなくなることはないので、これからも仲間や地域の皆さんと一緒に活動していきたいと思います。
 こうした活動を続けていくためにも、新しいメンバーを増やすことがいまの課題です。

〈菊池〉 『わぁのチャリ』は自転車の提供からスタートしましたが、学生の熱い思いからさまざまな支援活動が生まれました。これからも学生の柔軟な発想で、復興のためにできることはたくさんあるはずです。
 たとえば、来年の3月に、宮城県石巻市で養殖しているわかめの刈り取り作業を手伝うボランティアバスを出そうという計画もあります。これも『わぁのチャリ』の活動の一つです。私は、そうした新しい活動がどんどん出てくることを期待しているんですよ。
 いま、菅原くんも言ったように、『わぁのチャリ』の次の活動を担う人材が少なくなっているのが現在の課題ですが、こうした新しいイベントを行い、情報を発信することで、学生が復興支援に目を向け、自分ができることに気づいて、自ら行動する学生が出てくれば…と思っています。
 12月から「まちなか基地」を再開しますが、ここを新たな活動拠点として、将来的に学生主体で運営するボランティアセンターにしたいという構想もあります。大学と地域の垣根をもっと低くて、学生がもっと地域に出ていくことで新しい活動や交流が生まれ、それが学生の成長にもつながっていくと思いますから…。『わぁのチャリ』を、学生と市民の方とが一体になった活動にしていきたいですね。

 
■「わぁ!!のチャリ」の問合せ先
 山形大学農学部 菊池俊一さん TEL 0235-28-2880 E-mail : kikku@tds1.tr.yamagata-u.ac.jp
〈取材:2012年11月25日〉


 取材を終えて
たなかゆうこ
 山形大学農学部祭「鶴寿祭」で『わぁのチャリ』の活動報告会が行われ、取材に伺いました。発足のきっかけとなった自転車提供、支援活動の状況、被災者・避難生活者に寄せる思い、今後の取り組みや課題について熱心に語る学生の方たち。その真摯な姿にふれ、すばらしい活動内容に感心するとともに、頼もしさと清々しさを感じました。
 「復興支援のために何ができるか」を真剣に考えた学生ならではの発想、それを実行に移す熱意と行動力。そして菊池先生という良きアドバイザー、大学の理解とサポート、さらに地域・市民との連携があったからこそ、このプロジェクトが継続してきたものと思います。
 また、活動報告会には、代表を務める菅原さんのお母様の姿もありました。こうしたご家族の支えも、ボランティア活動の大きな力となっているのでしょう。
 しかし、一方で、震災への関心が薄くなり、『わぁのチャリ』の活動に参加する学生も少なくなっているのが現状とのこと。新しいメンバーの確保が、今後の課題といいます。これは、『わぁのチャリ』に限らず、支援団体に共通した課題といえるのでしょうが、復興はまだまだこれから。今後もさまざまな復興支援の場で、「学生の力」が必要とされるのではないでしょうか。ぜひ、後輩の方たちには先輩の思いを引き継いで、被災者や避難生活者の心に寄り添った支援活動を展開し、『わぁのチャリ』を継続・発展されることを期待しています。
たなか ゆうこ
03229