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エネルギーの地産地消を推進せよ(平成20年1月コラム)

平成20年1月:エネルギーの地産地消を推進せよ

エネルギーの地産地消を推進せよ(平成20年1月コラム)

 自由民主党は原油高騰で灯油代や事業経営に困っている人々を救済しようと1,000億円規模を助成する補正予算を組む案をまとめた。 また、政府は来年度予算案でエネルギー対策として前年度と同額の8,639億円を充てる原案を決めた。 灯油高騰で生活が苦しい家庭を緊急支援するのは当然である。 しかし、政府は平成9年に制定した「新エネルギー法」、平成14年策定の「バイオマス・ニッポン総合戦略」、平成18年策定の「新・国家エネルギー戦略」と相次ぎ対策を講じたものの、化石燃料依存の体質は改まる気配がない。 各省庁にまたがる来年度政府予算案のエネルギー対策費の詳細はまだ分からない。 バイオマス・エネルギー確保に69億円が計上されたという情報もあるが、原油高対策費の1,000億円と比べなんと少額であることか。 昨年末に日中両国の首相が合意した東シナ海のガス田開発も埋蔵量は少なく、大きな期待はできない。 化石燃料依存から抜け出す抜本的な対策を講じなければ、今後もその場しのぎの生活困窮者対策法が続くことになる。 エネルギーは、生活、産業、環境、輸送などあらゆる社会活動の基礎である。 エネルギー・セキュリティーを抜本的に再構築するパラダイム転換を行い代替エネルギー確保に本腰を入れるべきである。

 マイカー依存度の高い山形県民のクルマ移動はまるで札束をバラマキながら走っているようなものだ。 また、本格的な厳冬期を控え灯油暖房をどのように控えようかと頭を悩ませている家庭も少なくない。 昨年11月に原油価格は1バレル=99㌦まで上昇、企業業績も原油高が影響し急速に悪化した。 ニューヨークの原油市場価格はこの10年間で7.5倍に跳ね上がっている。 日本は原子力発電を準国産エネルギーとみてもエネルギー自給率はたった5%であり、韓国の3%に次いで低く、中国やイギリスの100%、アメリカの73%と比べて極端に低い。 カロリーベースの食料自給率が39%と低いので国を挙げて自給率向上に努めている食料問題への対応と比べ、エネルギー自給率対策の弱さは異常である。 さらに、石油換算した供給エネルギーの総量をGDPで割ったエネルギー効率は日本の場合0.09で世界で最も低く、経済力相応のエネルギー効率でないのも異常である。
 自動車社会のアメリカでは、原子力を除いたエネルギー自給率が高いにもかかわらず、トウモロコシをエタノールにして自動車燃料に使うことを始めた。 アメリカは世界のトウモロコシ輸出量の60%を占めるためシカゴの穀物相場が急騰したが、燃料用目当てのトウモロコシ作付面積が増え大豆畑面積が減少する見通しが出ると、あおりで大豆相場が急騰した。 このため日本の農業や食品産業が大きなダメージを受けている。 暖房や自動車燃料だけでなく原油高の影響は春風が吹けば桶屋が儲かる式にあらゆる分野へ波及する。 日本の石油輸入は90%を中東に依存しているが、その中東の原油供給は2010年をピークに減少するという予測がある。 中東の次の産油国はロシアとアフリカと見られている。石炭が豊富でエネルギー自給率100%の中国も経済成長を効率化する石油を確保しようと、カントリーリスクの高いアフリカへしゃにむに進出している。
 ロシアは石油を戦略物資として使い、ヨーロッパへの供給を一時ストップし震え上がらせた。 ヨーロッパでは自家用車の半分がディーゼル・エンジンであり、BDF(軽油代替)を使えるのでCO2排出を少なくしながら地域資源循環型燃料を使える。 そもそも、ルドルフ・ディーゼルがディーゼルエンジンを開発した時に使った燃料はピーナツ油だった。 比べて日本の乗用車でディーゼルエンジン搭載車はないので、タクシー・バス業界も耕耘機等を動かす農家も燃料高騰にあえぐことになる。 サトウキビ由来のエタノールを85%混合したフレックス自動車が走るブラジルでは、自動車産業が海外輸出で活況をみせ日本車メーカーも参入している。 日本ではエタノール混合は3%しか認められず、実質的な普及はゼロに近い。 京都議定書で1990年比で温室効果ガスを6%削減を国際公約した日本は逆に8%増えてしまった。 原子力発電をやめる宣言をしたのもかかわらずドイツは既に20%を削減を達成、さらに2020年までの20%削減に自信を持っている。 やる気になればやれるのである。ドイツでは国家戦略として「バイオ・エネルギー・ビレッジ計画」で農村集落が家畜ふん尿や農産物残渣や木質端材を原料にメタンガスを発生させ集落内の各家庭の暖冷房、湯、電気を自給している。農村型社会はエネルギーを地産地消できる有利な位置にある。

 日本ではこのままでいけば「木炭車を走らせることになるかも」「練炭や火鉢が必要になりそう」という時代逆戻りを懸念する声が出ている。 しかし、山形県はエネルギーの地産地消に適しており、エネルギー生産で先駆的に挑戦している事例が多い県であることは、案外認識されていないのではないか。 本県はバイオマス資源が豊富である。 そして、新庄市がスイートソルガムからエタノールを抽出し動力源にする実験を行い、山形市は下水処理場で発生するメタンガスで燃料電池を動かし施設内の電気を自給し、旧立川町は風力発電事業や木質から発電する実験を行い、村山市では民間企業「山形グリーンパワー」が木質を原料に発電事業を開始、山形市の「NPO知音」は菜種油の生産から廃油によるBDF生産、掃車等への供給まで行い、庄内と内陸にあるペレット生産工場がストーブ燃料を供給、最上町では山林の間伐材を燃料化し福祉施設の暖房やハウス農業の熱源にしている。 複数の自治体が一般家庭の太陽光発電利用に資金助成している。 エネルギーを無駄遣いする必要はないが、省エネを推進するだけでは生活も産業も輸送も環境も衰弱する。 無駄になっている資源が多いのだから、それを生かし自立度を高める地域経営が必要だ。 しかし、資源をエネルギーに変換するプラントが海外製や県外製が多いこと、社会システムが整備されていないのでエネルギー利用の出口の経済性に難点があることで、普及しない。 その壁を取り払うことこそ、産業政策の基本ではないか。

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