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ドキュメンタリー映画監督 伊勢真一氏 インタビュー

ドキュメンタリー映画「傍-3月11日からの旅-」「大丈夫。」「風のかたち‐小児がんと仲間たちの10年‐」山形上映によせて、監督の伊勢真一氏にインタビューしました
ドキュメンタリー映画監督 伊勢真一氏 インタビュー

「傍-3月11日からの旅-」「大丈夫。」「風のかたち‐小児がんと仲間たちの10年‐」 が、山形県内で上映されます。(「大丈夫。」 は5月19日~上映中)
「傍-3月11日からの旅-」 は、東日本大震災の被災地の方々に寄り添い記録した映像です。一人でも多くの方に観ていただきたいという願いを込めて、Yamagata1が現在構成団体として関わっている「復興ボランティア支援センターやまがた」にて、伊勢監督のインタビューをおこないました。

ドキュメンタリー映画監督 伊勢真一氏 インタビュー

ドキュメンタリー映画を撮影するようになったきっかけ

 僕は、大学は法学部なんですよ。でも、法律に対してあまり勉強しないで、大工になったんです(笑)。映画の仕事を始めたのは23、24歳位じゃないかな。
 父がドキュメンタリー映画の編集者で、癌で他界してから2カ月くらい経った頃、映画関係者から電話がかかってきて、「空いてますか?」って。今で言うフリーターですから、僕は空いていたんですよ(笑)。そう言ったら、「手伝ってくれるか?」と呼ばれて、膨大な数のフィルムを渡されたんです。やり始めたら面白くなっちゃって。
 これはどうも、神様がね、僕に「オヤジの仕事をやれ」と選ばれたんだと(笑)。そういう、最初に声をかけられた誤解で、すぐその気になってしまったという。それがきっかけかな、一番最初はね。

映画を作る意味とは

 「意味がある」とか、「誰かの役に立つ」と思って、みんなそれぞれのことをやっていると思うけど、もう一方で、「何で僕は、こういうことやるんだろう」って、ふっと思いますよね。ボランティアの活動もそうだし、我々が映画を作るのもそうだし。でも、ある時から「あんまりそれを突き詰める必要はない」と思うようになった。「そんなことは僕にはわからないんだぞ」と。もしかしたら、5年か10年、20年経った時に、「あっそうか、自分が作った映画は、こんなことをずっと語り続けているんだ」ということになるのかな。
 今、すぐに役に立つというよりは、もっと深い意味で、遠くまで、遠くまで飛ばすボールのようなものを投げたいというか。人間はね、そういうことをやる動物なんじゃないかって気がする。だからその時だけのことで何か正解を求められたり、あんまり向き合い過ぎたりすると、自分でやっぱり意味がないかなぁって。

震災を撮るということ

3月11日の次の日から、「復興」って言葉がメディアですぐ言われて、ものすごく違和感を覚えた。だって、そんなふうに思えるわけがないっていう人たちがたくさんいて、被災地じゃない僕たちでさえ、そんな気持ちになっていない時で。何かすごく一人一人のことが見えてないっていうふうに思った。それで、直接被災地に行くぞー!ということになったんです。

 実際に行ってみて、「言葉を失う」って言うけど、本当にそういう感じになって、何を撮っていいか分からないって状況になったんですよ。カメラをどっかに向けるなんて、できないですよ。空を撮るとかね、地面を撮るっていうことぐらいはできるけど。だって「撮らせて下さい」なんて言えないじゃないですか。花とか蝶々とかそういうのだけをいつも撮っていたんです。それは自然な感情だと思う。
でも、毎月11日の月命日のお墓参りを、4月からずっとしているうちに、月命日に来る方々が、逆に向こうからこう話しかけてきたんです。「私で良かったら話を聞いてもらえますか?」って……。だから、自分たちがこういうものを撮りたいとか、こういうものを作りたいとか言うんじゃなくて、本当に「撮ってくれ」って言っている人や、花や虫やそのものに対して目を向けるというのがベースだったような気がするね。

ドキュメンタリー映画監督 伊勢真一氏 インタビュー

 それと、今のマスメディアの特徴としては、やっぱり非常に、絵になるところとか、感動的なところだとか、異常に大変なところとか、そういうところに集中するんですよ。
今回、亘理町の人たちがとっても喜んでくれて。「ああ、亘理町の、私の町のようすを撮ってくれている人がいたんだ。誰も撮ってないと思ってた。誰も見てくれてないと思ってた。」って。撮影している時もそう言われたことがあるんだけど。要するに、取材に対して非常に反発する人もいるんだけど、もう一方で「どこも来ないのに、撮影してくれているんですね。見守ってくれている、ありがとう」と言う人もいるんです。
 でもね、結局は、どっかで神様か誰かが、「お前が行かないでどうすんだ」って言っているような気がするという、自分のそういう思い込みから。反省するんだけどねぇ、時々。

映画を作るというボランティア

 テレビとかはね、一応ちゃんとお金が出て取材してるけど、僕らは別に誰かが金を出してくれてやっているわけじゃないから、お金がなくなるんですよ。「これ以上続けたら、どう考えてもパンクするなぁ」というところまで行っても、それでも何とかする。だから余計、自分で何回も何回も思い返しますよね。「何で作るんだろう」みたいなことをね。
 やっぱり、ボランティアっていうと、みんなすごくまじめで誠実でというイメージがあって。「ドキュメンタリーって大変ですよね。でも、本当によくやっていらっしゃると思います」なんて言われると、そのへんに隠れたくなっちゃう(笑)。

「傍」に込められたメッセージ

 チラシに書いている、「『いのち』は生きるほうへ向かう」っていう、これは近作の「風かたち」「大丈夫。」「傍(かたわら)」3本の映画の撮影をしながら、すごく感じたところ。
 自然が、凶暴な形で人間を打ちのめしたわけだけど、打ちのめした人間を救うというか、支えるのも自然だよね。海で魚が捕れて、大地で農作物が採れて。やっぱりこういうふうにして、人間は自然と一緒に生きてきたし、これからも生きていくんだって。
 汚染のことなんかで懐疑的になったりする人は多いかもしれないけど、その最中にも、農家の人は一生懸命、田んぼや畑を「たとえ売れなくてもいいから、自分で育てる」ってやってましたね。「『いのち』は生きるほうへ向かう」っていうのは、小児がんの子どもたちからも学んだし、今度の被災地の人たちからも強く感じた。自分という「いのち」が、本当に生きるほうを向いているんだよね





山形での上映日程 
☆場所:フォーラム山形  http://forum-movie.net/yamagata/   023-632-3220


傍 「傍-3月11日からの旅-」

津波を運んだ海、その海に浮かぶ満月の傍で。友人たちの、逝ってしまった一人ひとりの、ただ祈る人々の傍で。それでも大地に海に生きる人々の傍で。ガレキに埋もれて咲く小さな花の傍で。

傍(かたわら)に耳を澄ませて欲しい。
春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来て、再び春は来る。
「いのち」は生きるほうへ向かうのだから



 上映日時  5月26日(土)・28日(月)10時10分より
         5月30日(水)・6月1日(金)18時30分より

※ 5/28(月)10時10分の回上映後、伊勢真一監督によるトークとサトロの唄があります。




大丈夫。

「大丈夫。‐小児科医・細谷亮太のコトバ‐」
第85回2011年度キネマ旬報ベスト・テン 文化映画ベスト・テン 第1位

「私は悲しいときに泣けなくなったら 医者をやめるべきだと思います」
山形県寒河江市出身の小児科医、細谷亮太氏と子どもたちのすがた


  上映時間  5月19日(土)~25日(金)13時より/18時半より   
 



風のかたち 「風のかたち‐小児がんと仲間たちの10年‐」
  上映時間  5月27日(日)10時10分より
                    5月29日(火)・31日(木)18時30分より




荒井氏

☆「伊勢監督の作品で一貫しているのは、『傍』というタイトルのように寄り添って、監督とカメラが、被写体とずっと向き合いながらいるということ。
 『傍』では、過酷な被災を受けた若者たちの、意欲と希望に満ちた笑顔があるんだよね。『大丈夫。』では、小児がんの子ども達が夢を語る。そういうのを見せてもらったら、すごく『自分も何かしなきゃいけない』って思う人が、いっぱいいるんじゃないかなぁ。」
FM山形「荒井幸博のシネマ・アライヴ」パーソナリティ 荒井幸博さん)


もっとく詳しく伊勢監督と作品を知りたい方は、こちらへ (「いせFILM」ホームページへ)


2012.5.22 Yamagata1

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