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自民党政治は終わり、か(平成21年8月コラム)

連載:Mr.Ishikawaの時事コラム

自民党政治は終わり、か

 ついに衆議院が21日に解散し、8月18日公示、30日投開票の総選挙へ向かう。世間では麻生政権の「ノックアウト解散」とか自公政権を変える「政権選択選挙」と評する声もある。共同通信の衆院選第1回トレンド調査(7月18、19日実施)では「自民逆風、民主追い風」の結果が出たという。衆院選に関心ある人のうち民主党へ投票する人が自民党に投票する人の3倍以上になり、自民党支持者の中にも比例代表、小選挙区で11%から15%の人が民主党に投票すると答えた。「政治は民意を反映していない」と思う人が87%を占めた全国世論調査結果もある。これらのデータはいずれも変化を求める民意のマグマが爆発寸前であることを示す。中川昭一財務相、渡辺喜美行革相、鳩山邦夫総務相と辞任や離党が相次ぎ麻生政権は瓦解状態になっていた。さいたま市長選、千葉市長選、静岡県知事選、東京都議選などで自民党が惨敗し地方の反乱が起きた。自民党国会議員の両院議員総会開催を求める声も議決権のない懇談会になり麻生降ろしの声は党公認拒否含みの脅しに立ち消えてしまった。自民党そのものが機能不全の状態に陥っているように見える。

 1990年代以降、自民党システムの存立条件は根底から崩れ始めていたという見方を示す野中尚人学習院大教授著の「自民党政治の終わり」(ちくま新書)がある。自民党は、冷戦終結やグローバル化や少子高齢化などの新しい課題に対応できず、行政官僚ともたれ合った意志決定スタイルで変化に適切に対応できす、農業者や建設業界など利益誘導を求める後援会票田が疲弊離反し、小選挙区比例代表制度や政党助成金制度がポストや資金の面倒を見る派閥構造を壊したことなどで、既に存立基盤が壊れていたという。このような観点で各種世論調査結果をみれば、「さもありなん」と頷ける。安倍、福田、麻生と看板を替えれば済む話ではなかった。昭和30年の社会党の左右統一と保守合同による自民党誕生の「55年体制」以後、自民党が政権を担ってきた。ところが、政界再編があり細川日本新党代表を首班指名した平成5年の細川内閣誕生で自民党が初めて下野した。これが自民党の1回目のダウンである。小選挙区比例代表並立制導入の選挙制度改革があった。平成10年の参院選で自民党は単独過半数を割った。これが2回目のダウンである。平成11年の第2次小渕内閣から自民党は公明党と連立を組み政権維持を図らざるを得なかった。ところが、平成19年の参院選で民主党が第1党になり参院の与野党勢力が逆転、衆参ねじれ国会となった。これが3回目のダウンである。仮に、今回の総選挙で衆議院の自公勢力が3分の2を下回れば、野党が優勢な参院で否決された一般法律は衆院で再可決できなくなる。仮に、衆議院で与野党勢力が逆転すれば、「55年体制」は根底から変わる。

 国会が真の政策論議を行う場に変わらなければ議員内閣制が崩壊し、国会議員は無用の長物になる。麻生首相は当初から官僚主導政治を拒否せず、官僚の敷いた路線に乗って政権運営してきた。また、数でごり押しし法案を通そうとした。本人は否定するだろうが、国民にはそう見える。いずれもイージーな政治姿勢である。国民の目線で物事を見ていないので、国内の実態を正確に認識できず、官僚が敷いたムダだらけで省庁組織優先の政策も修正できなかった。正しく認識できなければ、有効な政策を打ち出すことはできず、議員間の合意形成もできない。官僚にとっては御しやすい良い首相であっても、国民にとっては浮世離れした頼りにできないリーダーとなる。政権も自民党内の政治システムが変わっていないので短命に終わらざるを得ない。政治は毛並みでやるものではなく、事実認識に基づくビジョンと政策とリーダーシップで行うものだ。リーダーの資質と指導力を重視するイギリスでは地方政界から政治家の人材発掘、人材養成に力を注ぎ、政党内で政策論議を徹底的に行い、その上で投票で指導部を選ぶ政党民主主義システムができている。今の自民党システムにはそれがないので「自民党政治の終わり」となるのである。政党民主主義が重要なのは他の政党も同じだ。日本が真の民主主義国家に生まれ変われるかを左右する選挙である。国が担うべき課題、地方が担うべき課題を分け、政策の優先順位と政治手法を基準に政党を再編する“政界ガラガラポン”が必要だ。さて、選挙結果とその後の政局は如何に。

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