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温室効果ガス削減目標(平成21年7月コラム)

連載:Mr.Ishikawaの時事コラム

ダーウィンの法則
 麻生総理が6月10日に発表した2020年までに「05年比15%削減」という日本の温室効果ガス削減中期目標をめぐり、国際社会や国内各界からさまざまな反応が出ている。この数値は京都議定書で日本が約束した2012年までに「90年比6%減」と比べ2%上積みした「8%減」に相当する。97年(平成9年)12月に京都で開催された気候変動枠組条約の第3回締約国会議(COP3)から12年が経過したが、「6%削減」するはずの日本は逆に05年までに「7%増」になってしまった。それを考えれば「05年比15%削減」も達成は容易ではないのだが、発展途上国からは「温暖化防止を妨害したブッシュ前大統領の再来だ」と厳しい非難の声が上がった。同様に、国内からも奇妙な意見が聞かれる。例えば「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は地球温暖化の元凶を二酸化炭素と決めつけているが、太陽黒点による影響を無視している」とか、「温暖化防止を叫ぶのは一部のカネ儲けを企む人の戯言」などである。そんな間にも、海水温度の上昇や北極やヒマラヤ山脈の氷が解け続けている。絶滅した恐竜のように人類も地上から絶滅するのではないかと心配になる。ダーウィンの法則「強いものが生き延びるとは限らない。賢いものが生き延びるとは限らない。変化に対応できたものだけが生き延びる」が頭をよぎる。


利便性の裏に隠れていた環境への負荷
 太陽の黒点は地球の46億年の歴史に影響を与えてきたし、今後も与え続けるのは変わりない。だが、地球が太陽の黒点をどうこうできる訳がない。地球温暖化は地上の人間の行為が原因である点が問題なのだ。黒点論は論点のすり替えである。地球を直径30㎝のボールに例えれば、地球を取り巻く大気は0.5㎜の厚さであることは以前にも述べた。その薄い大気中の二酸化炭素は0.03%でバランスがとれているが、濃度が10%を超えると人間は生きられなくなる。約250年前の産業革命以前は280ppmだった二酸化炭素の濃度は06年に381.2ppmとなり過去最高になった。海水や樹木の緑などの吸収力も弱まっている。人間活動が盛んな北半球、植物活動が弱まる冬期間の濃度が高い。ガスの容積当たり温室効果はメタンなど二酸化炭素より高いものはいろいろあるが、なにしろ化石燃料から出る二酸化炭素の量が桁外れに多いため、二酸化炭素が地球温暖化の元凶になるのだ。人間は産業革命以来、石炭、石油、天然ガスと地下から掘り出してはエネルギー源や化学製品原料として利用してきた。また、ジェット機や乗用車の燃料や電気製品などの原料として文明の発達に貢献してきた点は認めなければならない。しかし、物事には必ず二面性がある。利便性の裏に隠れていた環境への負荷が人間の生存を脅かしていることが問題なのだ。


第二次産業革命を起こすぐらいの気概が必要
 わが国の07年の二酸化炭素排出総量は13億7,400万㌧となった。これは、世界の総排出量271億㌧の5%である。アメリカの21%、中国の19%、EUの12%に比べ格段にすくない。そして、日本のエネルギー自給率はたった5%である。原子力を国産とみれば20%に跳ね上がるが、エネルギーの約80%を海外から輸入した化石燃料に依存している。デンマークの場合は第一次オイルショック当時は90%を輸入原油に頼り自給率は2%だったが、それが2000年には139%になった。その背景にはバイオマス発電、風力発電の推進があった。また、ドイツの場合は再生可能エネルギー法によって50年までに自然エネルギー比率を50%に高める計画だ。フィード・イン・タリフ(FIT)という二酸化炭素を排出しないエネルギーを20年間にわたり固定価格で買い取ることに資金助成する制度を仕組んでいる。対する日本は新エネルギーの第一次エネルギーに占める割合はたった2%である。政治家は「日本は環境先進国」などと言うが思い違いも甚だしい。公害除去技術に限れば先進国だが自然エネルギー利用技術では後進国以下である。再生可能エネルギーを普及するにはそのエネルギーを使って経済的にペイできる社会でなければならない。世界で二酸化炭素削減に成功している国は全部その社会システムになっている。日本はその社会システムがないため京都議定書の「6%削減」も達成できなかったのだ。麻生総理の削減目標を達成するには再生可能エネルギーを使えば儲かる社会システムをどう構築するかにかかっている。そのためには第二次産業革命を起こすぐらいの気概が必要だ。NHKのアンケート調査で「温暖化対策で日本は世界の先頭に立って取り組むべきだ」と答えた人が68%を占めた。勇気づけられるデータではないか。

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